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葉月の第二の場所

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(本編)異国へのお引っ越し

 

 

どこかの国の路地裏で屈強な体格と武装をした目出し帽の男達が

 

 

一人の冴えない服装をした図書館帰りの女を壁際に追い詰めていた俗に言うカツアゲである。

 

「すみません返してくださいこれ交通費なんです………!あ」

 

女が後ろ手に押してしまった壁は形容し難い音を立てて豆腐のように粉砕されてしまった。

 

「…………………………は?」

 

思わず武器を落とし目を見開いて放心してしまう強盗の面々。

 

「…………また、やってしまいました……ごめんなさい壁さん……」

 

砕けた壁に対し頭を下げて申し訳なさそうに謝る女。

 

やっと事態を理解すると本能に従い女の財布を放り投げて

 

一目散に逃げ出した強盗達はその先で市民からの通報を受けた警察によって逮捕された。

 

「……………パパ達と違って怖がられないのはいいのですがこれはこれで複雑ですね……」

 

女は財布と眼鏡を拾ってから耳付近を探ると髪と同じく黒黒としており短いものの確かに角が存在していた。

 

女の名を山岸紗織(やまぎしさおり)。初対面だと同族にすら人間と誤解されがちだが生粋の鬼である。

 

紗織は落胆しながら重い足取りで家に帰ると両親が真剣な表情と仁王立ちで待ち受けていた。

 

「紗織ィ!!突然だが引っ越すことにした!!」

 

「場所はサクチュアリ!!彼処の山はトレーニングに丁度良いと聞いたからね!!」

 

名をそれぞれ剛力(ごうりき)、彩矢芽(あやめ)という鬼の男女は

肉体美を魅せ付け審美眼による得点を競うボディビルという競技

その大会で唯一のダブル優勝者というその道の者にとって伝説と呼ばれる存在だ。

 

蛇足だろうがこの前気分転換に家族はある孤島に行ったところ

剛力はそこの部族にゴリマッチョと呼ばれており不思議に思って聞いてみると

賢者の如く飢えに倒れた生物を慈悲深く介抱し言葉を話し

部族の信仰をその一身に受け密林の奥深くに君臨しゴー・リラーと敬意を持って呼ばれている

幻の存在に肖って付けられた名称で褒め言葉として使用されているものらしい。

 

「…………えっと、あの、私はそういう道には進みたくないのですが………」

 

反抗期という訳ではない。紗織はまだ触れないとはいえ

花と動物を愛し幼子を見守り少し気弱な部分が目立つが優しい人物だ。

 

「強制はしない!!が!その至高のシックスパックは残しておくべきだ!!」

 

「そう!!朽ちさせておくにはあまりにも勿体ない!!それが役に立つ仕事はいくらでもある!!」

 

 両親は根っからの脳筋でかなり押しが強く反対に紗織は弱い。

なおその役に立つ仕事というのは肉体労働だが間違ってはいない。

 

鬼の一生は他種族と比べて短く五十または六十が限界といったところだろう。

 

紗織の夢は図書館の司書だが冗談ではなく本気でそれに進もうとしている。

 

 

そのためには制御が不安定な怪力をどうにかしなければならない。

 

「………パパとママ」

 

「どうしたら加減できるようになりますか……教えて下さい……」

 

流れるような土下座である。謝罪に使われるのだが彼女なりの誠意といったところか。

 

それに色んな意味で熱い両親が影響されないわけがなく

 

「分かった!!だがその力は正しいことのために使えよ紗織!!」

 

男泣きしながらそれぞれ握手を交わすのだった。